東京商工リサーチの2023年の調査によると、全体の7割超の企業が人手不足を感じており、欠員率が5%以上の企業は約半数(51.4%)に達している。労働人口の減少により、各企業の人手不足は広がっており、すでに人材の争奪戦が始まっている。企業も初任給のUP福利厚生の充実フレックスタイム制リモートワーク時差出勤導入などの出産や育児のしやすい柔軟な勤務制度の導入や、教育研修の充実など、若者のニーズを踏まえた雇用環境の整備に努めている。教員の採用も大手企業や他の公務員などとの人材獲得競争となっており、未来を担うこどもたちのためにも「教育は国家百年の計」という言葉通り、優秀な人材を確保するために、時代の先手を打った改革が必要である。

学生が教員を目指すのに障害となっていると考えられること

・長時間労働、残業の常態化、部活動などでの休日出勤などの労働環境

・難しい保護者への対応案件の増加

・生徒への個別対応など業務量の増加

・仕事量(労働時間)と給料が見合っていない

・分業制が進んでいないため、休みを取りにくく柔軟な労働環境がない

・教職課程が卒業要件として単位が認められないため、履修の負担が大きい。

教師の仕事は個人商店

 まず教師の仕事は、個人商店だとよく云われる。担当はチームではなく個人が基本。例えば、自分が担当する授業担任のクラス部活動の顧問。これはそれぞれ、これらの担当は副担任や副顧問はいるが、基本的に1年間、自分が個人で責任を持って担当することになる。したがって授業中に生徒が騒いで授業が成立しなくなったり、担任の指導が通らない学級崩壊の状態になったりすれば、それは基本的には自分個人の責任。また、チーム制ではないため、自分が休みをとると、誰かが代わりに授業やクラスに入らなくてはいけなくなるので、真面目で人がいい教師ほど休みを取りづらい。これは多かれ少なかれこれは民間企業でもあることだと思うが、教員数を増やして複数による担当制にすることで、責任も一人ですべて背負うこともなく、分散できる他、休みも取りやすくなり、仕事と育児の両立もかなりしやすくなるはず。またどうしても教師と生徒も人間なので相性が合わないこともある。複数の目で生徒を見ることができれば、こういう点も生徒にとってもかなりプラスになる。そしてこれは、教員定数を改善し、予算さえつけることができれば実行できる話でもあるのだ。

新採教員でも保護者の見る目は厳しい

 しかし、現状は教師の仕事は個人請負の「個人商店」。新採教員は、教員免許を持っているということで、個人として、4月から授業や担任の業務を担当する。新採は経験がないので当然苦労するし、うまくいかないことも多い。かつては、経験がなく教育の技術がない分を若さとパワーで補いそれを乗り越えていくというのがパターンだったが、保護者の見る目も厳しい今は昔よりも大変。

採用者に研修をし、教員免許を授与する

 本当であれば、採用された最初の1年間は見習いと研修の期間とし、授業や担任の業務の補佐をしながら、理論的な研修を行うシステムがよい。内容としては教育実習のような形になるが、現状のように「3週間、実習をやったから一人前でしょ」というのは酷な話。大学での教職課程の履修を無くし、他の公務員と同様に採用試験に臨めるようにする。(当然採用試験の実施時期の前倒しも必要)そして採用されてから1年間は研修生として扱い、まずは社会人としての心得とマナーから入り、主となる教員の補佐をしながら、仕事についての実務的な研修と現場での実習を行う形とし、それが終了したら教員免許を与え、教員として一人前として扱うシステムの方が、新採教員にも優しいし、就活時に、教員を視野に入れる学生も増えるだろう。現状では、教員免許の取得見込みの学生しか民間企業と教員を天秤にかけて就職活動はできないが、採用試験を受けて合格し採用した者に対して公的機関が研修を行って教員免許を与えるシステムにすれば、民間企業からの転職者も含めて優秀な人材も集めやすくなるし、1年間で教師としての適性の見極めもできる(現状では試験に合格し採用したら教員に不適格な者も辞めさせることは難しい)。教員の社会的地位も低下している現在、「教員に成りたければ教員免許を取ってから志望しろ」という上から目線的な姿勢で人が集まってくる時代ではない。

 大学は、教職課程を実施する必要がなくなり、既得権益が失われることになるので、反対意見も多いと思うが、日本の教育界の未来を考えてぜひ実行してもらいたい。

投稿者

管理人ひろ

大学卒業後、サラリーマンとトラックの運転手を経て中学校の教員として30年間勤務。2025年3月、57歳で早期退職。FIREの生活に入る。人生のセカンドステージのキーワードは「志に生きる」

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