神宮球場の六大学優勝決定戦

 土日に行われた早慶戦に2連勝し、この日明治大学との優勝決定戦に臨む早稲田大学の応援に神宮球場へ。やはり自分は歴史とノスタルジーを感じるこの球場が一番好きなのだが、残念ながら2031年に建て替えで新球場が今の秩父宮ラグビー場の跡地にできるらしい。試合開始の1時間前に球場に入ったのだが、明治はブラバンの音合わせくらいしかやっていないのに、早稲田はすでに試合前にもかかわらず、ずーっと応援を続けて盛り上がっている。こういうところは早稲田らしい。何といっても、普段は第一応援歌「紺碧の空」(これを歌う時はなぜか肩を組まないといけないらしい)、卒業式でも式の最後に会場全員で学生歌「早稲田の栄光」を肩を組んで歌うようなちょっと暑苦しい大学なので・・・。

伊藤樹投手推し

 試合は初回に早稲田が6安打で4点をとり、楽勝と思いきや、さすがに明治も意地を見せ、3回に5点をとって逆転し、白熱した展開に。しかしその後は早稲田の大エース伊藤樹投手(仙台育英・4)が踏ん張り、早稲田が6-5で勝利、リーグ戦3連覇を達成した。伊藤樹投手は、リーグ戦の明治戦でもノーヒットノーランを達成するなど、ここぞというところではやってくれる早稲田の大黒柱。この伊藤投手は仙台育英秀光中の軟式野球部の出身。実は自分は合同を組んでいた監督のツテで秀光中が印西に大型バスで遠征してくれて、彼が中2の秋に練習試合で伊藤投手と対戦したことがある。(ちなみにこの時の秀光中は全中で準優勝)当時、秀光中は現在、仙台育英高校の監督を務めている名将、須江航監督が指導しており、「キャッチャーをやっていたのだが、肩も強いし、コントロールもいいので、ピッチャーをやらせ始めたばかりなんですよ」と言っていた。まっすぐは140km近い球で、彼が投げた時に自分は主審をやっていて間近でボールを見たのだが、スライダーはベース1個分くらい曲がっていて驚いた。自チームは当然ながらバットに当てることもできず、立ち上がりから11連続三振だった記憶がある。もちろん、自分が対戦した中学生の中ではNO1の投手だったので、一度応援に行きたいと思っていたがようやく実現した。伊藤樹投手は、六大学でも1年次からマウンドにあがり、今まで神宮で13勝をあげ、早稲田3連覇の立役者となるなど順調に成長してきた。きっと今後ドラフトで指名されてプロに進むと思うので今後も伊藤樹投手を推していきたい。

創立者大隈重信の早稲田精神

 早稲田大学の勝利の校歌を久しぶりに聴いたが、その歌詞にもある通り、早稲田の校訓は「進取の精神」と「学問の独立」である。創立者である大隈重信は、立憲改進党を結成して、政党政治と議会政治の発展に尽力し、総理大臣を2回務めるなど政治の世界で活躍した佐賀(肥前)藩出身の人物である。自分が学生の時に藩校の儒学と歴史中心の古い精神論の教育に疑問を抱き、教育改革を求めて藩内で論戦を繰り広げ(大隈は議論好きで有名)、西洋の新しい知識や技術を学んだというチャレンジ精神を持っていた「進取の精神」の人である。

 「学問の独立」とは、これも早稲田のキーワードである「在野精神」「反骨精神」と結びつき、反権力の心意気や時勢に左右されない「自主・独立」の精神を持った国民を養成するという理念である。大隈がこの理念を掲げて早稲田大学の前身である東京専門学校を創設してから140年以上経った現在、アメリカのトランプ大統領がその権力を持ってハーバード大学などに圧力をかけ学問の自由が脅かされたり、色んな情報が乱れ飛び、価値観や考え方が多様化した現代社会においてこの理念が重要さを増しているのは大隈候の慧眼であろうか。