
この日、中学校の地域の野球大会が行われて、自分も試合へ。うれしいことに新チームになってから公式戦初勝利の初勝利を見ることができた。部活動は試合に勝つことがすべてではないが、最初は勝てなくても、生徒に積み重ねた努力が形になることを体験させてあげることも大事。そういう責任も感じながらやっているので部活動の顧問の負担は正直言って大きい。自分は、陸上競技部を6年間、バレーボール部を8年間、野球部を15年間と3つの運動部の顧問を経験した。自分自身は学生時代に柔道の経験しかないので、いずれも自分の競技経験がないスポーツを教えてきた。幸いにもいずれの競技でも県大会まで経験させてもらうことができ、部活動の経験は自分の人生にとって大きな財産となっている。
しかし思い返すと、未経験の最初の時期の指導は滅茶苦茶苦労した。大体、こちらが未経験だと、生徒も顧問を信頼していないし、こちらの労力が大きいのに対して生徒や保護者側からの感謝もあまりないので、やりがいという点でも返ってくるものがないのだ。部活動は本来、教育課程外の活動なので、やりがいがなかったらただ大変なだけ・・・。しかも生徒に対しての責任もある。教員の仕事がブラックと云われる要因として部活動の存在が大きく取り上げられ、現在部活動の地域移行が進められているのも理解できる。
では部活動を安易に学校の教育活動から切り離してよいかというと自分は反対の立場である。理由は2つ、部活動の学校における教育的意義と国民の健康づくりの点からである。
部活動の教育的意義


部活動を指導している教師と地域のスポーツクラブの指導者の違いは、活動を行う目的が、部活動ではその競技の技術や体力の向上が最終目的ではなく、あくまで最終目的は人格の形成であるという点で、大半の教師はここを押さえて指導している。(もちろんこういう考えの地域の指導者もたくさんいると思うが)そういう意識を学校では共有しているので、いくら大会で良い成績を上げても、部員の学校生活での態度や行動がよろしくなければ校内の先生方には評価されない。あくまで、部活動での取り組みが学校生活に生かされなければやってる意味がないというのが教師の意識なのだ。特に昔は部活動と通じて学校をよくするというある意味、生徒指導と部活動指導が一体化していたので、部活動を学校から切り離そうという発想がなかった。学校は教科の学習をする場所というのが、大義であるが、実際には勉強が苦手で、毎日の授業が苦痛になっている生徒もそれなりにいる。特に成績が上から下までいる公立中学校では、勉強面で自分の存在をアピールできない子にとって、部活動が学校に登校する動機としてかなりの部分を占めていたりする。もし部活動が完全に学校から切り離されたら今よりも不登校はもっと増えるであろう。
部活動が支える健康体力づくり
令和6年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査 報告書より


学校では「新体力テスト」というものが毎年保健体育科を中心として行われている。上はその結果であるが、この結果をみると令和2年から令和4年ぐらいにかけて小中学校ともに体力合計点が大きく下がって、肥満傾向児の出現割合が大きく上昇しているのがわかる。令和2年~4年というと、そう、コロナ禍の影響であろうということが容易に想像できる。コロナ禍で家にいることが多くなったり、学校でも体育の授業や部活動が練習が大きく制限されたことが如実にこの結果に表れている。
昔よりも、こどもたちが外遊びをする機会が大きく減り、遊びの中で体を動かすということがあまりなくなった。小学生は習い事やとして、水泳や体操教室、地域のスポ少でサッカー、野球、テニス、バスケなどに自ら参加してきた子とそうではない子で運動能力やスポーツの経験の大きな差が生まれてきている。小学校では運動の経験のない子も中学校段階で部活動があるから、運動部に所属してみようという考え入部するケースもまだまだかなり多い。いいか悪いかはわからないが、強い意志を持って競技者としてのスポーツを始めようというのではなく、みんながやるから自分もやってみようかなという子も多い。部活動が完全に学校から無くなったら、地域クラブで自ら希望してわざわざ活動しようという子は限られてくることが予想される。部活動における運動部は、大会などが目標としてあり、いわゆる趣味としての運動活動ではなく、競技としてのスポーツを経験させることを目的として行われているものが大半であり、こうした経験が、こども達にとって成長期の大切な時期に健康な体づくりに資しているのはもちろん、精神的にも人格や人間性の形成に大きな役割を果たしていることを忘れていけない。家庭の考えや状況によらず、こうした経験が幅広く、平等に与えられるのが部活動の利点でもある。
部活動は学校教育の中で大きな役割を果たしている

他にも異年齢の存在との活動によって、年上や年下との関わり方や礼儀、マナーの習得の場となっていることや、青年期特有の有り余るエネルギーをぶつけたり、クラス以外の人間関係を持てる場として、学校において部活動は大切な教育的意義を有していることを忘れてはいけない。ただもちろん、だからといって教員が犠牲になって、これをつづけろという訳ではない。長くなるので話の続きは次回にしたい。